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Case
- クライアント:株式会社WORKOUT
- ブランド:パーソナルトレーニングジム「REAL WORKOUT」
- スコープ:出資・事業戦略設計・各種制作
出会いは2018年のことだったと思います。株式会社WORKOUTの土屋CEOは、そのゴリゴリのストリートファッションと蛍光グリーンの髪以上に、自社が属するジム業界に対する強い課題意識と熱意が印象的でした。
当時は高単価・短期集中型のジムが勢いを増していましたが、それは同時にリバウンドリスクに晒される人の増大も意味していました。「2ヶ月の谷」といって開始後2ヶ月で顧客が急に離脱しやすくなる傾向が業界として認識されていましたが、高単価・短期集中はその谷の手前で投資回収するビジネスモデルと言えました。
一方「REAL WORKOUT」は、2ヶ月後の分かりやすい成果を追うよりも、健康的なボディメイクや本人の続けやすさを優先していました。そうした背景を聞くにつけ、続けやすいか、そうでないか、持続可能かそうでないかは、当面の業界の争点にすべきだと考えました。
そこで「サステナブル・ボディ」をキーワードに「長く素敵でいられる健康的なカラダになれるブランド」として打ち出していく戦略を提案。売りの一つであった低価格という点も、「安い」ではなく「通い続けやすい」と読み替えることにしました。一般的な月謝制ではなくチケット制であることもこれと整合していました(行けなかった月に損をしない)。
土屋CEOの課題意識は消費者側だけでなく、そこで働くトレーナー側にもありました。当時多くのジムではメソッドやマニュアルが比較的厳格に決められており、それは経験の浅いトレーナーのクオリティアップには一定の意味がある一方、経験や腕のあるトレーナーにとっては能力を活かしきれないまま低賃金で働かされるという不条理も生んでいました。
初期の成長フェーズでは、消費者、トレーナー両サイドの不条理を解消していくべく、WEBサイトやセールスシート、採用コミュニケーションなどを組み立てていきました。それに先立って「REAL WORKOUT」のロゴもリニューアル。名称の想起を補助するという短期的な狙いと、長期的な耐久性の観点から設計しました。
Studiesとしても出資という形で資本参加しながら並走して数年。店舗数も90店舗を超え(2022年当時)、業界有数のプレーヤーに成長してきました。業界の王者に挑むアウトサイダーだった「REAL WORKOUT」は、マスブランドのフェーズを意識すべき時を迎えました。
数年間の間にメディア環境、特にSNSの環境は大きく変わってきました。そしてその変化の一つである「映え」カルチャーの隆盛は、人々の「見た目」への意識を変え、「より美しく見せたい」が「より美しくなければならない」「ああなれないとダメ」という強迫観念を生んでいました。SNSを開けばビジュアル強者がキラキラした姿を披露しいいねを追求する。それを見る側も、そして当のビジュアル強者自身もまた加速するルッキズムに飲み込まれていくーーそんな世界線が広がっていました。
片やボディメイクは健康だけでなく美しい自分を目指すという意味で、ルッキズムを助長しうる要素を含んでいます。しかしボディメイク、中でもパーソナルトレーニングは、本来既製品のような完成形としての肉体を目指すのではなく、本人の骨格や体質、理想の生活や美的感覚に合わせてオーダーメイドで創っていけるのもまた特徴でした。自分らしい美しさが本当にあるんだということを、身体というメディアで実感できるシステムでもあるのです。
「あなたにはあなたの美しさがある。誰かになろうとするのはやめて、自分を好きになれる自分になりませんか?」
これをネクストフェーズのイシュー、社会への提案とすることにしました。
「ブランドがニッチな頃は尖ることで競合他社を闘えばいいが、闘う相手がいなくなったマスブランドは、みんなに嫌われないように丸くするのがセオリー」と言われます。しかしStudiesはそうは考えませんでした。
「REAL WORKOUT」が闘ってきたのは競合他社ではなく、業界の不条理という社会課題でした。だから尖った存在から丸い存在にシフトするのではなく、ある社会課題から、別の社会課題へと闘う相手をシフトすればいい。そう考えたのです。
こうした戦略は、どんなパーソナルジムプレーヤーにも当てはまるわけではなく、土屋CEOの情熱に触れ、語り合い、仲間として働くトレーナーさんたちのひたむきさを感じる中で紡いで行った、同社においてのみワークするものです。ブランドが異なれば解は異なるでしょうし、まして「ブランディングって要はお化粧、見せ方だろ?」と言ってプロダクトの存在意義、提供価値と真剣に向き合うことを怠るプレーヤーに良い解を示せるほど、Studiesは器用ではありません。またそういうことはしたくありません。
もちろん、上記の解が正解かどうかは、今後、時が証明してくれることを謙虚に待たなければなりません。
株式会社WORKOUT
代表取締役CEO 土屋耕平様